直交射影行列
直交射影行列では直交射影を表現する。
射影であって、直交方向に射影するものを、直交射影という。
光の方向が、影を落とす対象に対して直交する。影を落とす対象の空間 (つまり射影の像) を固定したとき、直交射影はひとつに定まる。
直交射影の簡単な説明
(TODO: 図)
一般にいう直交射影のイメージ:
- ペアから特定の(いくつかの)要素を抜き出す:
- F:X×Y→X であって (x,y)↦x と定義されるものは、 X を抜き出す直交射影
- 特定の低次元へと影を落とす:
- 三次元物体(たい)の、床(XZ平面)に映る影を各点で落とす関数 p(x,y,z)=def(x,0,z) で定義される関数 p:R3→R3
- その像から誘導される P(R3)→P(R3)
- 円運動をy軸に直交射影すれば正弦波運動になる。
直交射影行列の定義
定義1. 羃等性による定義
行列 P が以下すべてを満たすとき、直交射影行列と呼ぶ。
- 射影行列である (羃等性: P2=P)
- エルミート行列である: A=A†
羃等性は、 P による作用は二度目以降は、一度目と同じ効果ということ。
実数上の線形空間ならエルミート行列に関する条件は必要ない。
定義2. 直交射影を起こすことによる定義
行列 P が、なにかしらの直交射影関数の表現行列であるとき、直交射影行列と呼ぶ。
PV が直交射影関数であるというのをより形式的に書くと次のようになる。
なにかしらの内積空間 V⊆U について、 PV:U→V が直交射影関数であるとは、r=dimV とし、それぞれ以下のように正規直交基底がとれるとして、
- EV=(v0,v1,⋯,vr−1)
- EU=(v0,v1,⋯,vr−1,⋯)
としたとき、PV は単に EV の成分の抜き出しに相当するときをいう。
すなわち、 PV(u)=∑i∈r⟨u,vi⟩vi と表される。
言い換えれば、適当な基底があって、
11⋱100⋱0なる表現を持つ線形写像のこと。
なので、直交射影行列とは、基底の取り方の揺らぎを許した全体の行列、すなわちこれに基底変換をした行列全体。ユニタリ行列 U を用いて以下の表示を持つ、と整理することもできる。
(直交射影行列)=U(IrOn−r)U†(通常の基底変換の表示 U†AU と逆だが、 U† もまたユニタリ行列となるのでこちらで説明する)
ここで、U=(u0,u1,⋯,ur−1,ur,⋯,un−1) だとすれば、
===U(IrOn−r)U†(u0,u1,⋯,ur−1,ur,⋯,un−1)(IrOn−r)u0†u1†⋯ur−1†ur†⋯un−1†(u0,u1,⋯,ur−1,ur,⋯,un−1)u0†u1†⋯ur−1†0⋯0i∈r∑uiui†という表示を持つことだとも言える。
(定義1) ⇐ (定義2)
証明
羃等性=====P2(i∈r∑uiui†)(i∈r∑uiui†)i∈rj∈r∑uiui†ujuj†i∈rj∈r∑ui(ui†uj)uj†i∈r∑uiuj†P(定義2の表示で展開)(ベクトルの分配則)(ベクトルの結合律)(正規直交基底の性質 (i=j は 0 になって消える))(これは定義2のPの表示そのもの)エルミート性=====P†(i∈r∑uiui†)†i∈r∑(uiui†)†i∈r∑ui††ui†i∈r∑uiui†P(定義2の表示で展開)(随伴操作の線形性)(随伴操作の性質)(随伴操作の性質)■
(定義1) ⇒ (定義2)
証明
固有値は0か1まず、定義1による P は固有値が 0 か 1 になることを示す。
任意の固有値と固有ベクトルの対応するペア λ,u を考える。
===⟨Pu,Pu⟩⟨P†Pu,u⟩⟨P2u,u⟩⟨Pu,u⟩(内積の特徴)(直交射影行列のエルミート性)(直交射影行列の羃等性)最初と最後の式を固有値の特徴から変形すれば、 λλ⟨u,u⟩=λ⟨u,u⟩ が得られ、 λλ=λ となる。
上記の式変形を、右側に P を移すことで、λλ=λ も得られる。
λ=λ で λλ=λ を置き換えれば、二次方程式 λ2=λ より、 λ=0,1 となる。
本証明ユニタリ行列で対角化すれば、適切に順序を入れ替えることで、
P=U(IrOn−r)U†の表示が得られる。
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